僕は
引越しが好きだ。

それまで慣れ親しんだ街にちょっとシュールな別れを告げ、まだ見知らぬ街に向かう時の期待感。恋い焦
がれる愛しい人に会いに行くような胸のときめきを感じるではないか。新しい街を探検しコンビニ、酒屋、
床屋、定食屋、ラーメン屋と次々と捜して行く。喜んだりがっかりしたり、ついつい部屋に溜まっている
荷物の山も忘
れてしまう。

そんな引越しフェチの僕の最後の引越しは98年の6月であった。梅雨で雨がそぼ降る中、新潟ブルース
を口ずさみながら2年余りを過ごした新潟に別れを告げた。向かう先は山形。僕が生まれ育った街だ。
勝手知ったる所だけに胸のときめきはさすがになかった。むしろこの先一生住むのかと思うとなぜかブル
ーな気持ちになる。安住を決心した西部開拓者もこんな気持ちだったのだろうか。安定と引換えに失う男
のロマン、フロンティアスピリット。宇宙戦艦ヤマトの五代進に憧れ、名曲「真っ赤なスカーフ」に涙し
た僕の中で何かが失われたような気がした。こうして僕は安住の地になるであろう山形へやって来た。

僕は実家から徒歩数分の所に居を構えた。居を構えたと言ってもアパートだがいわゆるスープの冷めない
距離だ。スープが冷めるか否かで距離を計るのも何だが、とりあえず実家の近くで一人暮らしを始めた。

異変に気付いたのはそれから1ヶ月程後のことだった。

朝がキツイのだ。元来僕は朝に強い方ではない。しかしこんなに朝にダルさを感じるのはかつて無かっ
た。最初は環境の変化から来る緊張感で疲れが溜まっているんだろうと思っていたが、どんなに睡眠時間
を長くしても一向に疲れが取れない。むしろ朝起きた時に一番疲労感を感じる。夜中に目を覚ます訳でも
なく、なかなか寝付けないという訳でもない。疲れが取れない以外は至って以前と変わらないのだ。3ヶ
月も経つとこの疲労感は日中の仕事まで影響するようになっていた。頭がボーッとして集中できない。ま
さしく僕は原因不明の体調不良に陥っていた。

炭を焼いているという「朴訥な男性」に出会ったのがちょうどその頃だった。(参照:ギックリ腰編
ある日その男性はひょんなことから私の住所と具体的な立地条件を聞くと突然こう言った。

疲れ取れねぇべ。

私は本当に驚いた。疲れが取れないという話しはこれっぽっちもしてなかったからだ。どうも私の住んで
いる所は場所(山や鉄塔等との位置関係)といい、周辺の建物の環境といい最悪の「磁場」だと言うので
ある。腰痛防止用の炭ベルトでそば殻炭のパワーを体験済みだった僕は早速設置用のそば殻炭を言われた
数だけ3個アパートに置いた。

それから3週間後・・・

その日は訪れた。爽やかな朝が訪れたのだ!何となく疲れが無くなってきたと1週間程前から感じてはい
たのだが、こんなにすっきりとした気分で目覚めるのは本当に久しぶりだった。それからはもちろん疲れ
た時は疲れるが以前の様な身体不調ともいえる疲労感はなくなったのである。

後日談としてこんな話しもある。ある日東京から連休を利用して山形へ遊びに来た友人が私のアパート
に泊まったことがある。彼は朝起きるとこう言った。

こんなによく眠れたの何年振りかなぁ〜

と呟いたのだ。聞くと彼は数年前から不眠症気味だったそうだ。恐らく炭を置いているからだろうと私が
言うと早速その炭を買って帰って行った。その後彼の不眠症は治ったと聞いている。

2001.1.18 中村祐一著

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