なんじゃこりゃぁ〜!

1999年6月、ある朝起きたら腰に激痛が走った。僕は松田優作のごとく雄叫びを・・・上げなかった。
朝っぱらからそんなことを叫ぶほど僕は変人じゃない。「昨夜は腰を使い過ぎたな」とつぶやき、僕の
横で眠る愛しい人にそっとくちづけを・・・って、誰もいないじゃないか!当たり前だ。ぼくは寂しい
一人暮らしだったことを思い出した。原因不明のまま3日が過ぎたが腰の痛みは増すばかりだ。ようやく
病院に行った僕に待ち受けていたものは衝撃的な事実だった。

中村さん、ギックリ腰ですね。

いかにもプライドの高そうな若いドクターがにやけた顔で言った。ギックリ腰?この歳で?使い過ぎでも
ないし、特別重たいものを持った訳でもない。僕は箸より重いものは持たない主義だ。ドクターになぜ
ギックリ腰になったのかを尋ねた。

寝返りですね。寝返りうっただけでもギックリ腰になるんですよ。
中村さん、運動不足だね。30代後半のカラダだよ。


ケッ!余計なお世話だ。

と言えない小心者の僕は「スイマセン」などとなぜか謝って帰ってきた。

 
その後僕は晴れて腰痛持ちの仲間入りを果たした。疲れると腰にくるし風邪をひいても腰にくる。もちろん
重量挙げなんかしても腰にくるだろう。そろりそろりと腰を気づかいながらの人生だ・・・
「なんでもないような事が幸せだったと思う〜♪」僕はいつか流行った歌謡曲を思い出していた。

 僕のそろり人生もそれから数カ月過ぎていた。そんなある日、僕の目の前にはそば殻炭ベルトなるものを持った
初老の男性が立っていた。炭を焼いているという朴訥な感じのその男性は恐ろしく日に焼けていた。そして彼の
手は大きくて厚く力強いものだった。炭を焼くという仕事の大変さはその手から伺えた。

これば付けでっと腰痛あてなんねがらねぇ。(山形弁:これを付けていれば腰痛になんかならないからね)

男性はそう言うとそば殻炭の効果を話しながら親切にも僕のベルトにそば殻炭ベルトを付け出した。この人には
虚言癖があるに違いない。こんな逞しく誠実そうな手を持つ人間の言う事じゃない。男性の作業をボーっと見な
がら僕はそう思った。

 それから3週間ほどが過ぎた。ベルトに炭を付けていることもあまり気にしていなかった。しかし、

そういえば最近腰が痛くないなぁ・・・

僕はふと気付いたのである。炭が効いていることを。やはりあの時の男性の手の印象は本物だったのだ。それを
虚言癖だなんて・・・それ以来僕はこの炭をずっと付けている。激しい痛みは一度もないし、一旦炭を外すと腰
が痛み出すから炭は本当に効いているんだろう。これで腰痛の心配もほとんど無くなった。ヨカッタ、ヨカッタ。
でも新たな心配ごともできた。

もしもこの炭が無くなってしまったらどうするんだろう・・・

そう。この炭が無ければそろり人生が再び始まるのだ。


2000.11.7 中村祐一著

噂のベルトはこちら!


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